お茶の教室で習い始めた茶道のお稽古。そこで、はじめて「茶事」に招かれることになった・・・・・・
でも「茶事ってどんな流れになっているのか?」「どんなやり方で時間はどれくらいかかるの?」 ちょっと不安になりますね。
じつは、「茶事」は、一般の茶会とは全くちがうものです。茶会にくらべて、「茶事」のスケジュールはたくさんあります。
そこで、このページでは、茶道の初心者の方に「茶事の流れ」についてご説明いたします。
私は、京都の陶芸家として、抹茶碗などの茶道の道具を20年以上作りつづけてきました。また、裏千家の茶道でお稽古を続けています。
このページでは、じっさいに私が参加した茶事の体験をもとに「茶事の流れ」をご説明いたします。
あなたが、「茶事」に招かれたときの準備として、ぜひご一読ください。
茶事の読み方は、一般的には「ちゃじ」、表千家では「さじ」と言う
まず「茶事」の読み方についてです。これは「ちゃじ」と読みます。辞典などでの正式な読み方は「ちゃじ」となります。
しかし、茶道の表千家流では、「さじ」と読みます。また、裏千家の場合は「ちゃじ」と言います。
そのため、一般的には「ちゃじ」でよいと思います。
理由は、日本の茶道の最大流派は裏千家となっています。茶道人口の約半数は、裏千家流と言われています。そのため、一般的には、「ちゃじ」のほうが通りはよいと思います。
茶事の意味とは、フルコースの茶会のことです
「茶事」とは、食事やお茶のお点前(おてまえ・茶をたてること)を含めたフルコースの正式な茶会となります。
また、「茶事」は、知っている者だけの少人数をまねいて行います。
そして、「茶事」のいちばんの目的は「茶をおいしくいただく」ことなります。この点では、通常の茶会と同じといえます。
「茶事」と通常の「茶会」のちがいについて、くわしくは以下の記事で解説しております。
以上のように、「茶事」は、少人数で行う正式なフルコースの茶会です。そして、「茶事」の大まかな流れは、以下のようになります。
1.茶の湯をわかすための炭にをつぎ足し
2.懐石(かいせき・食事のこと)をさしあげ
3.濃茶(こいちゃ)をおだしして
4.さいごに薄茶をさしあげる
以上の、一連の流れが「茶事」とよばれます。茶事は、茶の湯をわかすための炭火のつぎ足しから、食事、そして濃茶(こいちゃ)と薄茶(うすちゃ)をいただきます。
「濃茶」と「薄茶」については、以下の記事をご参照ください。
そして、つぎの写真は、私が参加した「茶事」のものです。
写真のように、「茶事」では服装は女性も着物を着て参加します。着物は日本では正装(せいそう)だからです。着物がないのであれば、最低でもスーツを着て参加します。
たとえば、「茶事」は、いわばヨーロッパの晩餐会(ばんさんかい)とお考えください。
晩餐会の参加者は、ドレスやタキシードなどの正装で参加します。そして、豪華な料理やワインをそして、会話を楽しむのです。
また、さいしょに「茶事」のいちばんの目的は、「一服の茶を楽しむためにある」と申しました。晩餐会では、「ワインを楽しむために行われる」ところも似ています。
以上のように「茶事」とは、食事や濃茶や、そして薄茶のお点前(おてまえ)まで含みます。いわば、フルコースで行われる茶会だということになります。
茶事の流れ、時間は4時間以上:待合・席入・初座・中立・後座・退席
つづいて、「茶事」の流れをくわしく見ていきましょう。
「茶事」の茶事のスケジュールは以下のようになっています。 そして、「茶事」にかかる時間は4時間以上となります。
1.待合(まちあい)
2.席入り(せきいり)
3.初座(しょざ)
4.中立(なかだち)
5.後座(ござ)
6.退席(たいせき)
以上のようなスケジュールについて、以下に「茶事の流れ」をくわしく説明していきましょう。
まずは、「茶事」が行われる場所についてご説明します。
本格的な茶事は、「茶室」にて開かれます。「茶室」とは、茶道で客をまねき、もてなすための専用の部屋のことをいいます。
しかし、「茶事」は一般的には、ご自宅の一部屋を「茶室」とすることが多いでしょう。
次の写真は、自宅の一部屋を茶室として「茶事」をおこなっている様子です。
次に、それぞれの項目を、くわしく説明していきます。
1-1.待合
茶事のさいしょは、「待合」(まちあい)となります。ここでは、茶室に入るまえの準備を行います。
「待合」の流れは、以下のようになります。
1.寄付待合(よりつき・まちあい)
2.腰掛待合(こしかけ・まちあい)
3.迎付(むかえつけ)
4.蹲(つくばい)
1-1-2.寄付待合(よりつき・まちあい)
初座では、「寄付待合」(よりつき・まちあい)での身じたくから始まります。「寄付待合」とは、客が身じたくをととのえる部屋のことです。
ご自宅などで茶事では、茶事を行うのとは別の部屋が「寄付待合」として用意されます。
この寄付待合では、茶事に不要な荷物をかたづけます。また、着物に着がえるなどの身じたくを整えます。
茶事の服装やマナーについては、以下の記事をご参照ください。
1-1-2.腰掛待合(こしかけ・まちあい)
身じたくがととのえば、つぎは「腰掛待合」(こしかけ・まちあい)へ案内されます。「腰掛待合」とは、茶室に向かう露地(ろじ)にある待合所のことです。
この「腰掛待合「にて、客が全員そろうのを待ちます。そして、亭主(茶事にまねいた人)がお迎えのあいさつに来るのを待ちましょう。
ご自宅の場合は、茶室の部屋のとなりの部屋を「腰掛待合」とすることが多くなります。
1-1-3.迎付(むかえつけ)
腰掛待合にて、客が全員そろったところで、亭主が「迎付」(むかえつけ)のあいさつに現れます。
1-1-4.蹲(つくばい)
亭主と客のあいさつのあと、「蹲」(つくばい)にて手と口を清めます。
これは、茶室の前に作られている蹲(つくばい)を使います。蹲(つくばい)とは、石をもちいて作られた手洗い場のことをいいます。
つぎの写真は、「つくばい」の一例です。
この「つくばい」にて、手と口を清めてから茶室に入ることになります。
1-2.席入
「つくばい」で、手と口を清めたあとは、いよいよ「席入」(せきいり)となります。「席入」とは、茶室に入ることをいいます。
「席入」は、以下のスケジュールで行われます。
1.席入(せきいり)
2.床の間拝見(とこのま・はいけん)
3.炉(ろ)と釜(かま)の拝見
4.あいさつ
1-2-1.席入(せきいり)
まずさいしょは、「席入」です。入る茶室が小間(こま・ちいさい茶室)では、「にじり口」から入室します。
「にじり口」とは、茶室への小さな入り口のことです。小さな入口から、体を「にじらせて」(身をかがめること)入るので、こう呼ばれます。
なぜ、このような小さな入り口にするのか? それは、小さい茶室を大きく見せるための演出だからです。
茶道では、お客さまに対する演出をアチコチに工夫している面白さがあります。
また、ご自宅の茶室であれば、襖(ふすま)を開けて入りましょう。
そして、席入では、「正客」(しょうきゃく)から順番に茶室にはいることが決まりとなります。「正客」とは、その「茶事」でメインのお客さま、または、主賓(しゅひん)という意味です。
とくにメインゲストが決まっていない場合です。そのときは、客のなかで、茶道のもっともベテランの方を正客とします。
正客は、茶事のなかで、亭主との会話や問答(もんどう)を主導する重要な役目があるからです。
1-2-2.床の間拝見(とこのま・はいけん)
つぎに、茶室に入ってまず行うことは、床の間の「掛け軸」(かけじく)と「花入れ」のお花を拝見(はいけん)することです。
掛け軸と花入れの前に正座ですわります。そして、おじぎをしてから拝見をするのです。
じつは、茶道では「掛け軸は最高のごちそう」といわれます。
まねく側の亭主の気持ちのこもった「掛け軸」と、その季節の「花入れ」がかざられてるからです。じっくりと拝見しましょう。
1-2-3.炉(ろ)と釜(かま)の拝見
掛け軸と花入れを見たあとは、「炉」(ろ)と「釜」(かま)を拝見します。「炉」とは、茶の湯をわかすための炭をいれる場所のことです。
タタミの一部を切りとって、作られています。また、「釜」は湯をわかすための鉄のなべのこととなります。
以下の写真は、「炉」と「釜」の一例です。
1-2-4.あいさつ
この、炉と釜を拝見したあとに、「亭主」が茶室に入り正客とあいさつをかわします。
以上で、「席入「は終了となります。
1-3.初座
席入が終わり、全員が自分の席に正座したあとは、「初座」(しょざ)とよばれるスケジュールとなります。
「初座」とは、いわば茶事の前半という意味です。
この「初座」では、懐石(かいせき・食事のこと)や主菓子(おもがし・メインデザート)をいただきます。そのため、「初座」が茶事のメインイベントだと思われるでしょう。
しかし、「初座」は、あくまでも準備です。冒頭で申しましたように、茶事のいちばんの目的は「おいしい茶を楽しむこと」だからです。
茶をおいしく味わうために、食事とお菓子をとるのです。
「初座」は、以下の流れですすみます。
1.炭点前(すみてまえ)
2.香合拝見(こうごう・はいけん)
3.懐石(かいせき・食事)
4.主菓子(おもがし)
1-3-1.炭手前(すみてまえ)
初座では、まずは、「炭手前」(すみてまえ)を行います。炭手前とは、茶の湯をわかすための炉(ろ)で炭火をおこすことです。と同時に、炭の灰を美しく整える作法となります。
このとき、この炭点前を見るために、客が炭火の近くに集まります。炭火の近くに集まることで、客が冬の寒さで冷えた体を温めるという亭主「心づかい」となります。
また、この炭点前のとき、「練香」(ねりこう)といわれる、お香を炭火の近くに置きます。
「香合」(こうごう・お香の入れもの)にいれられた、練香を取りだします。それを炭火の近くにおきます。すると、茶室全体になんともいえない良い香りがただようのです。
炭手前で体をあたため、練香で良い香りを楽しむ。このうよな、ゆったりとした時間のなかで茶事は、すすんでいくのです。
1-3-2.香合拝見(こうごう・はいけん)
炭点前が終わると、「香合の拝見」の拝見となります。
つぎの写真は、私の工房で作った「香合」の一例です。
炭手前のときに練香をいれるのに用いた「香合」を、正客から順に見ていきましょう。
1-3-3.懐石(かいせき・食事)
つづいて、「懐石」(かいせき)と言われる食事がはじまります。「懐石」とは、茶事でだされる正式な食事のことをいいます。
茶室にて、「折敷」(おしき・お膳のこと)に乗せられたお料理をいただくことになります。
次の写真は、「懐石」の食事の一例です。
そして、「懐石」のメニューは、「一汁三菜」(いちじゅう・さんさい)または、「二汁五菜」(にじゅう・ごさい)となります。
一汁三菜といえば、質素な料理を想像されるかもしれません。
しかし、質素ではありません。次から次へと料理が運ばれてきます。お腹いっぱいになるほどです。
そして、「懐石」では、お酒もふるまわれます。亭主は、客にたいして「これでもか! これでもか!」という気持ちでもてなすのです。
「懐石」でこのように食事でもてなすのは、つぎにいただく茶をおいしくするためです。濃茶は、とても濃いお茶です。空腹で濃茶いただくと胃にダメージがきます。
この濃茶を楽しむため、「懐石」でおなかを満たします。
それから、濃茶を飲むと、わずかな甘みと濃厚な味と香りがします。ですので、お茶がとてもおいしく感じられるでしょう。
ただし、初めて、濃茶をお飲みになった方は、苦いとおもいます。
しかし、飲み慣れてくると甘みと濃厚な味わいが分かるようになります。
たとえば、濃茶は、コーヒーでいえば「エスプレッソ」のようなものです。エスプレッソは濃厚な味と香りのコーヒーです。
このように、「懐石」での食事は、そのあとの「一服の茶」をおいしく感じてもらうためにあるのです。
1-3-4.主菓子(おもがし)
懐石の食事のあとは、「主菓子」(おもがし)とよばれるお菓子をいただきます。主菓子とは、メインのデザートという意味です。
主菓子はお重箱や菓子鉢(かしばち・お菓子をいれる鉢)などに入っています。それを、それぞれ自分の懐紙(かいし)にのせて、いただきます。
以下の画像は、主菓子をいただいている様子の写真です。
懐紙にのせた、主菓子を菓子切(かしきり)をもちいて切ります。菓子切とは、お菓子を切りわけるための道具のことです。
懐石の食事と主菓子をいただいたあとは、いったん休憩となります。
1-4.中立(なかだち)
中立(なかだち)とは、休けいのことです。懐石の食事と主菓子が終われば、いったん庭で休息をはさみむこことなります。
この間に、客は、庭を拝見します。また、用意されている煙草盆(たばこぼん)で一服することもできます。
「中立」で休けいのあとは、いよいよ本番のお茶の時間となります。
1-5.後座(ござ)
庭で休けいのあとは、「後座」(ござ)となります。これは、いわば茶事の後半という意味です。
「後座」のスケジュールは以下のようになっています。
1.席入(せきいり)
2.濃茶(こいちゃ)
3.薄茶(うすちゃ)
ここからが、茶事の本番です。茶事の目的は、「茶を楽しむ」ことだからです。
1-5-1.席入(せきいり)
この「後座」の「席入」では、ふたたび正客(しょうきゃく)から茶室にもどります。初座での席入と同じとります。
1-5-2.濃茶(こいちゃ)
後座の席入につづいては、「濃茶」となります。
「濃茶」では、1つの大きめの茶碗で数人分の茶を練ります。濃茶の場合は、点てる(たてる)ではなく「練る」(ねる)といいます。
1つの茶碗に練られた濃茶を、3人ほどの客で回し飲みをします。
これは、1つの茶碗で茶いただくことで、客同士の心を通いあわせるためのものとなるからです。
ただし、濃茶では、3人めともなると茶がものすごく濃くなってしまいます。茶碗にお茶の水分をとられるからです。濃茶が飲めないほどドロドロと濃くなることをあります。
茶が、液体ではなく、固体のようになることもあります。そんなときは、お湯でうすめてもらうようにお願いしましょう。
また、濃茶をいただくさいに正客と亭主の問答があります。正客とは、客のなかで一番先頭に座っている客のことです。
正客は茶を一口飲んだとき、「茶の銘柄」や「お詰め」(おつめ・お茶を購入した店名)そして、主菓子について亭主に質問をします。
茶事では、会話ができるのは「正客」(しょうきゃく・先頭にすわる客)だけです。次客(じきゃく)(2番めにすわる客)よりあとの方は、話しません。
しかし、知り合いだけで開く「茶事」では気軽に会話をすることもあります。
さらに、「濃茶」では、客の全員が茶を飲み終えたあと、お道具の「拝見」(はいけん)がございます。
「拝見」とは、濃茶の茶席でもちいた道具について、亭主と正客が問答をします。正客が質問をして、亭主がそれに答える会話のことをいいます。
この「拝見」では、お道具のカタチや作者について正客が質問するのです。
「拝見」するのは、つぎの道具となります。
1.「茶入れ」(抹茶の粉末の入れもの)
2.「茶杓」(ちゃしゃく・抹茶の粉末をすくうサジ)
3.「仕覆」(しふく・茶入れをつつむ袋)
「拝見「では、次客よりあとの方は、聞いているだけでかまいません。それぞれの道具を由来をを楽しんで聞きましょう。
また、「濃茶」に使われる抹茶碗の種類には、決まりがあります。「濃茶」でもちいる茶碗については、以下の記事をご参照ください。
1-5-3.薄茶(うすちゃ)
茶事のさいごは、「薄茶」のお点前(おてまえ)となります。
薄茶では、亭主が「おうす」(薄茶のこと)をたてているあいだに、客は、お干菓子をいただきます。
お干菓子とは、水分のすくない乾いた和菓子のことです。生菓子ではないものとなります。薄茶の茶席では、「お干菓子」(おひがし)などの軽いお菓子と薄茶をいただく決まりとなります。
つぎの写真は、お干菓子の一例です。
お干菓子は、徳島県の伝統的な砂糖である和三盆(わさんぼん)でつくったものが有名です。
このお干菓子も、あなたの懐紙にのせていただきましょう。
そして、お干菓子をいただいたあとは薄茶をいただきます。薄茶のときは、1人が1つの抹茶碗で茶をいただきまます。1つの茶碗を数人と回し飲む「濃茶」とちがうポイントです。
以下の写真は、薄茶をいただいている様子の写真です。
また、「薄茶」では、濃茶で用いる茶碗とは別の種類の茶碗が使われます。薄茶でもちいる抹茶碗について、くわしくは以下の記事をご参照ください。
つづいて、この「薄茶」でも、「道具の拝見」があります。
薄茶の拝見でも、濃茶と同じく亭主と正客のやりとりとなります。次客以降の方は、そのやりとりを聞いて楽しんでください。
薄茶の席では、以下のような道具について、質問が行われます。
1.お棗(なつめ・抹茶の粉末の入れもの)
2.茶杓(ちゃしゃく・抹茶の粉末をすくうサジ)
次の写真は、棗と茶杓の一例です。
棗(なつめ)や茶杓(ちゃしゃく)などの道具について、カタチや作者、そして銘(どうぐの名前)について正客が質問をします。
それに亭主がこたえて会話のやりとりを行います。
1-6.退席 (たいせき)
薄茶の茶席の拝見が終わると、いよいよ最後は「退席」(たいせき)です。「退席」とは、茶事が終わり、客が帰る用意をすることです。
亭主が、薄茶でつかった道具をすべて片付けます。そして、茶道口(さどうぐち・茶室の入り口)の外に座ります。そこで「主客総礼」(しゅきゃく・そうれい)をします。
「主客総礼」とは、亭主と客の全員が、正座にて、お辞儀をすることです。ここでは、おたがいに感謝の気持ちをこめてお礼をしましょう。
主客総礼が終わると、正客から順に席を立ちます。それから、ふたたび床の間の掛け軸を拝見します。
つづいて、炉(茶の湯をわかすための炭火を入れるもの)の前にまわり、炉を拝見します。
つぎの写真は、炉の画像です。
正客から順に、「炉」の拝見をすませます。そのあとは、茶室の出入り口を開きます。そして正客から順に「後退」(こうたい)つまり、茶室からでていくこととなります。
客の全員が茶室を出たあと、亭主は出入り口が閉まる音を聞きます。そこで亭主はふたたび茶室にもどります。
亭主は、茶室の中から出入り口を開き、見送りに出ようとします。
しかし、正客は亭主の見送りをていねいに辞退するのです。
そこで、さいごに亭主と客の全員が礼をします。それを見とどけた亭主は茶室の出入り口を閉める流れとなります。
そして、客は、寄り付き(ひかえの部屋)へ戻ります。そこで身じたくをととのえて帰宅することとなります。
ただし、ここまで正式な「退席」をするのは、一般的な茶事では、まずありません。一般的な茶事とは、茶道教室で行う茶事や、友だち同士で茶事を開催する場合です。
私が通う茶道教室での退席では、通常の宴会や食事会のような解散の仕方をしています。
これで、ようやく長かった「茶事」の流れが、すべて終わりとなるのです。
まとめ
「茶事」の流れでは、たくさんのスケジュールがつまっていましたね。
「茶事って大変そう・・・・・・」「作法通りできるか心配・・・・・・」
と思われるかもしれません。
しかし、「茶事は、お茶を楽しむこと」が目的です。
作法通りにまちがいなく行うことが目的ではありません。
その点について、茶道の祖先である「千利休」に次のような話があります。
亭主の気持ちは、しっかりと利休に伝わっていたから、この茶事は「よい茶事」だったと言えるでしょう。
あるとき、千利休は茶事にまねかれました。
ところが、まねいた亭主は、とても緊張していました。お湯はコボすは、茶筅(ちゃせん・茶をまぜる道具)をヒックリ返すわ・・・・・・
その茶事の帰り道のことです。利休と同席した客が、「今日の亭主は最悪でしたね~」と笑いました。
しかし、利休は、「今日の亭主ぶりは天下一」と言ったそうです。
たしかに、亭主は、緊張でガチガチになってました。でも、それは一所懸命な心があったからこそです。
そして、利休はこう言いました。「あなたの目には、亭主の心づくしのしつらえや、準備が目に入らなかったのですか?」と
また、よい茶事では、亭主が伝えたいこと、見せたいものという目的がハッキリとしています。
その目的を亭主と客のおたがいが、余計な説明をすることなく、おしはかり合うことが大切です。
また、本当によい茶事にするための「抹茶碗の選び方」について詳しい解説は、以下の関連記事を参照してください。
この記事では、茶事や茶会で、茶道の初心者の方向けに、本当に使いやすい抹茶碗の選び方を解説しています。
このページを読んでいただくと、使いやすく、そしてお客さまにも喜ばれる「抹茶碗の選び方」がわかるようになります。
あわせて、茶道でいうところの「本当のおもてなしとは何か?」についても解説させていただいております。
また、京都はしもと製陶所では、橋本城岳(はしもと・じょうがく)のブランドで抹茶碗を製作しています。
京都の清水焼の熟練の職人による、すべての工程が手づくりのものです。
「京都はしもと製陶所」では工房から直売となっています。ですので、高品質であっても低価格となっています。
よろしければ、京都はしもと製陶所の商品ページも一度ごらんください。