濃茶と薄茶の違いや入れ方を動画と写真で解説!茶道の抹茶碗の違いも説明

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茶道のお茶には、「濃茶」(こいちゃ)と「薄茶」(うすちゃ)の2種類があります。陶芸家の私でも、茶道の初心者のときには、知りませんでした・・・・・・

じつは、濃茶と薄茶では、「茶葉の種類」や「お茶の入れ方」、さらには「使われる茶碗」までちがいます。

そこで、このページでは、濃茶と薄茶での「茶葉の種類のちがい」や「茶の点て方」そして、 「抹茶碗のちがい」と についてご紹介します。

濃茶と薄茶のちがいや特徴を知っておけば、おいしい抹茶を楽しむことができるでしょう。

私は、京都の陶芸家として20年近く、抹茶碗を作りつづけてきました。その職人の目線で紹介させていただきます。あなたにとって最適な抹茶碗を選ぶときに、お役立てください。

※動画は後半の5章にあります。

1.濃茶は濃厚な抹茶。薄茶はサラリと薄い。

「濃茶」(こいちゃ)は、その名のとおり「濃厚な抹茶」です。

いっぽうで、「薄茶」(うすちゃ)は、「サラリとした薄い抹茶」となります。

まずは、濃茶と薄茶の見ための違いを見てみましょう。

以下の写真は、「濃茶」の抹茶です。

濃茶用の黒楽の抹茶碗と濃茶の画像
濃茶は濃いお茶。ドロリとして濃厚な味わいが特長。

濃茶は、濃茶用の茶葉を使って作ります。そして、茶葉の量が多く、ドロリとした濃厚で芳醇(ほうじゅん)な味わいが特長の抹茶です。

また、濃茶は、「おこい」と呼ばれることが多くなります。

反対に、以下の写真は「薄茶」の一例となります。

ホタルの平茶碗と抹茶の画像
薄茶は、薄い抹茶。サラリとしたシブ味が特長。

「薄茶」は、濃茶にくらべて薄く、サラリとしたシブ味が特長の抹茶です。

一般的に、抹茶といえば「薄茶」のことをいいます。そして、薄茶のことを「おうす」と呼びます。

次の章からは、濃茶と薄茶の違いをくわしく説明していきましょう。

2.濃茶も薄茶も「茶事」の一部を切りとったもの

そもそも、濃茶も薄茶も「茶事」(ちゃじ)の一場面を切りとったものとなります。

「茶事」とは、茶道で正式な茶会のことです。その「茶事」とは、いわばフルコースの茶会となります。

茶事については、くわしくは以下の記事をご参照ください。

薄茶も濃茶もどちらも、正式な「茶事」の一部を切り取った茶会、またはお稽古なのです。

茶道のおけいこやお茶会では、この茶事の一部である濃茶と薄茶の作法だけを練習しているのです。

また、薄茶の場面だけで、お茶会を楽しんだりということが多いです。

そして、濃茶と薄茶の違いをまとめると以下のようになります。

濃茶と薄茶のちがい

1.使う茶葉がちがう

2.もちいる茶筅(ちゃせん)もちがう

3.お茶のたて方がちがう

4.もちいる茶碗も変わる

5.茶道では、作法もちがう

では以上のことを順番に説明していきます。まずは、濃茶と薄茶のお茶のちがいです。

3.濃茶は濃茶用の茶葉を使う。薄茶は濃茶用と薄茶用どちらでもよい。

この章では、濃茶と薄茶の「茶葉のちがい」をご説明します。

それから、濃茶で使う茶葉は、品質の高い濃茶用のものを選びましょう。

濃茶は、とても濃いお茶です。そのため質の低い茶葉だと、味がシブくなりすぎます。ですので、苦味の少ない良い品質のものを選びましょう。

また、濃茶用の茶葉は品質が良いぶん、値段がかなり高くなります。

以下の写真は、「濃茶用の茶葉」の商品の一例です。

濃茶用の茶葉の商品の一例の画像
濃茶は品質の高い高級品。茶葉の値段は、40グラムで2,000円ぐらいから。

このように、「濃茶の茶葉」は、40グラムで2,000円以上する高級品となります。。

次に、濃茶用の茶葉の商品名についてです。

濃茶用の茶葉では、商品名に「昔」(むかし)とついていることが一般的です。

たとえば、濃茶用の商品名は、以下のようになります。

濃茶の商品名

・「平安の昔」(へいあんのむかし)

・「万丈の昔」(ばんじょうのむかし)

このように、「昔」とつきます。

反対に、薄茶用の茶葉を濃茶に使ってはいけません。

薄茶用の茶は、シブ味があるからです。濃茶で用いるとシブ味が強すぎて飲みにくくなります。

いっぽうで、「薄茶」の茶葉の価格は、濃茶に比べてかなり安くなります。

薄茶でもちいる抹茶は、濃茶よりも品質や価格が1つ下になります。薄茶で使う茶葉は、少々シブくてもよいからです。

以下の写真は、「薄茶用の茶葉」の商品の一例です。

薄茶用の茶葉の商品の一例の画像
薄茶用の茶葉は、40グラム600円から。濃茶にくらべると価格が安い。

私の工房の近くの茶葉の専門店では、40グラム600円からとなっています。

「濃茶の茶葉」が、40グラム2,000円~4,000円であることと比べると、「薄茶の茶葉」はかなり安いですい。

しかし、茶葉の製法そのものは、濃茶も薄茶も同じです。

石うすで茶葉を引いている画像
濃茶も薄茶も茶葉の作り方は同じ

また、薄茶の茶葉の商品名には、「〇〇の白」と白の文字がつくことが多くなっています。

たとえば、薄茶の茶葉の商品名は、以下のとおりになります。

薄茶用の茶葉の商品名

・「精華の白」(せいかのしろ)

・「山月の白」(さんげつのしろ)

以上のように、商品名に「白」とつきます。濃茶では、「昔」でしたね。

そして、薄茶には「濃茶用の茶葉」を使ってもよいです。理由は、濃茶の茶葉は品質が高く雑味がないからです。

「濃茶の茶葉」を「薄茶」でもちいても、雑味のない上品な茶の味を楽しめます。

反対に、「薄茶用の茶葉」を濃茶でもちいてはいけません。

濃茶は、濃茶用の高級な茶葉を使いましょう。薄茶は、薄茶用または、濃茶用の茶葉でもかまいません。

3-1.購入する茶葉の分量は40グラムで棗が満タン

抹茶の茶葉は、20グラムや40グラムという量で販売されていることが多くなっています。

これは、茶葉40グラムで、「棗」(なつめ)が満タンになるからです。棗(なつめ)とは、茶道で用いる抹茶の粉末の入れものです。

つぎの写真は、棗の一例です。

棗(なつめ)と茶葉の画像
抹茶の粉末の入れものの「棗」(なつめ)は、茶葉が40グラムで満タン。

ですので、棗にいっぱいに購入したいときは、40グラムをお選びください。少なくなった茶葉をつぎ足す場合は、20グラムでOKです。

また、茶葉の味をためしたいときは、20グラムを購入すればよいのです。

4.濃茶は格の高い抹茶碗、薄茶では、お好みの茶碗をつかう

濃茶と薄茶で使われる抹茶碗のちがいについてご説明します。

まず、「濃茶」では、「格」の高い抹茶碗を用いるという決まりごとがあります。濃茶は、いわば茶事のメインイベントだからです。

そのため、濃茶を飲むときは、以下のような格の高い茶碗から選ぶこととなります。

茶碗の格の順番

1.楽焼(らくやき)

2.萩焼(はぎやき)

3.唐津焼(からつやき)

4.井戸茶碗(いどちゃわん)

以上のことを「一楽・二萩・三唐津」(いちらく・にはぎ・さんからつ」と呼びます。

濃茶では、この中から選びましょう。

次の写真は、楽焼・萩焼・唐津焼の抹茶碗の一例です。

濃茶では、「各」の高い茶碗を使う。楽焼・萩焼・唐津焼を用いるのが基本。

濃茶でもちいる茶碗は、写真のように基本的には無地のものとなっています。

理由は、濃茶の場面では、「ムダな会話をつつしむ」という決まりごとがあります。

そのため、絵のない無地の抹茶碗が選ばれます。

この、4つの格の高い抹茶碗について、詳しい解説は以下の記事を参照してください。

いっぽう、薄茶では、格の上・下に関係なく茶碗を選んでもよいのです。薄茶は、カジュアルな茶会ということだからです。

以下の写真は薄茶に用いる抹茶碗の一例です。

薄茶用の絵柄のある抹茶碗の画像
薄茶では、絵柄のある茶碗でOK

薄茶では、写真のように絵柄のある茶碗を使ってもよいのです。絵のついた抹茶碗をもちいると、その茶碗についての会話がはずみます。

薄茶の茶会では絵柄のついた茶碗をもちいて会話を楽しみましょう。そして、濃茶では格の高い茶碗から選んでください。

4-1.濃茶の抹茶碗のサイズは大きめ、薄茶では小さめ

つづいて、濃茶と薄茶での抹茶碗のサイズについて解説いたします。

濃茶の茶会では、大きめのサイズの抹茶碗を用います。1つの茶碗で、2~5人で回し飲みをするからです。

1つの茶碗でまわし飲むことで、みんなが心を通わせることができるのです。

濃茶の茶会では、1つの茶碗で回し飲みする画像
濃茶では、1つの茶碗を数人で回し飲みする

いっぽう、薄茶では、1人が1つの抹茶碗でお茶をいただきます。そのため、小さめのサイズの茶碗を選びます。

薄茶の茶会の画像
薄茶は、1人が1碗で茶をいただく

4-2.濃茶は厚手、薄茶はうす目の茶碗をつかう

「濃茶」にもちいる抹茶碗は、厚みをあるものをつかいましょう。

理由は、濃茶は熱湯から少し冷ました約80度ほどのお湯をで茶を練るからです。

濃茶は、厚みのある茶碗を使うことで、茶が冷めにくくなります。

濃茶用の黒楽の抹茶碗の画像
濃茶は、厚みのある抹茶碗をつかうことで、茶が冷めにくくなる。

先にご説明した、各の高い茶碗は、いずれも厚みのある茶碗の作りとなっています。

いっぽう、「薄茶」の場合は、厚みの薄い茶碗でもかまいません。

薄茶では、90度以上の熱湯で茶を点てるからです。茶が、少々冷めるぐらいのほうがちょうど良いからです。

薄茶では、厚みのうすい抹茶碗でもよい。

「濃茶」では、厚みのある抹茶碗をもちいましょう。そして、「薄茶」は、厚みのうすい茶碗をつかいましょう。

このように、茶会のちがいによって使われる抹茶碗も変わります。

さらには、抹茶碗のカタチや絵柄のちがいによって飲みやすさやお茶の点てやすさも変わってきます。

薄茶の茶会で用いられる「抹茶碗の選び方」について詳しくは、以下のページを参照してください。

この記事では、抹茶碗の選び方についてプロの陶芸家がわかりやすく解説しおります。

あなたが抹茶碗選びに失敗しないために、ぜひ参考にしてください。

5.茶筅の穂数は、濃茶は80本立て、薄茶は100本立て

「茶筅」(ちゃせん)も 濃茶と、薄茶ではちがいます。茶せんとは、抹茶を混ぜるときにつかう「竹の道具」のことをいいます。

見こみの広い茶碗と茶せん
「茶せん」は、濃茶は80本立て、薄茶は100本立て

そして、一般的な茶せんの「穂数」(ほすう・穂先の数)は、「80本立て」と「100本立て」となっています。

「80本立て」と「100本立て」の違いは、以下のとおりとなっています。

  • 80本立ては、濃茶用
  • 100本立ては、薄茶用

となっています。

薄茶用が「100本」と多いのは、薄茶では、抹茶を泡立てるからです。ですので、薄茶をまぜることを茶を「点てる」(たてる)といいます。

茶せんでお茶を点てる画像
薄茶は、泡立てるので100本立てを使う

反対に、濃茶では、「80本立て」以下の穂数(ほすう)の少ないものをもちいます。濃茶は泡立てないからです。

そのため、濃茶では、茶を「練る」と言います。

茶筅を選ぶときは、濃茶は「80本立て」、薄茶用は、「100本立て」を購入しましょう。

6.茶の入れ方のちがいを動画で解説

濃茶と薄茶では、茶の入れ方がちがいます。

濃茶は、「練る」(ねる)と言います。茶せんを使って、茶葉と湯をなでるように練ります。

また、「濃茶の練り方」の動画は、以下の記事をご参照ください

このページでは、芳醇(ほうじゅん)な味わいの濃茶の作り方を「動画と写真」でわかりやすくご紹介しております。

いっぽうで、薄茶では、茶を「点てる」(たてる)と言います。

茶葉と湯を、茶せんをシャカシャカと振って、泡立てるようにしあげます。

以下の記事では、動画と写真で「薄茶の点て方(たてかた)」を詳しく紹介しております。ぜひご参照ください。

このページでは、おいしい抹茶(薄茶)の作り方の「4つのポイント」にまとめて、わかりやすく解説しております。

まとめ

以上のように、濃茶も薄茶もフルコースの茶事の一部となっています。

茶道のおけいこや茶会では、茶事の濃茶のところだけ切りとって練習したり、薄茶の場面だけでお茶会を楽しんだりしているということです。

それでは、濃茶と薄茶の茶会のちがいをまとめます。

まず、茶葉のちがいは、以下のようになっています。

濃茶と薄茶の茶葉のちがい

・濃茶の茶葉は、濃茶用を用いる。

・濃茶用は、商品名に「昔」とつくのが一般的(例・平安の昔)

・薄茶の茶葉は、濃茶・薄茶用どちらでもよい。

・薄茶用は、商品名に「白」がつくことが多い(例・精華の白)

茶筅(茶せん)のちがいは以下のようになります。

濃茶と薄茶の茶筅のちがい

①濃茶は「80本立て」を選ぶ

②薄茶は「100本立て」を用いる

濃茶と薄茶の抹茶碗の「各」のちがいは、次のようになります。

濃茶と薄茶の抹茶碗のちがい

①濃茶では、格の高い抹茶碗から選ぶ

②薄茶では、お好みの茶碗を用いてよい

④濃茶と薄茶用の抹茶碗を選ぶポイントは、以下のとおりです。

濃茶の場合は、以下のような茶碗を用います。

濃茶の抹茶碗

①茶道では、「格」の高い抹茶碗を選ぶ決まり

②茶道では、回し飲みするため、大きめのサイズ

③冷めにくい厚手の茶碗(少し冷ました湯を使う)

薄茶の茶碗の場合は、次のようになります。

薄茶の抹茶碗

①お好みの茶碗を用いてよい

②小さめのサイズの茶碗(一人一碗)

③薄手の茶碗でもよい(熱湯を使うため冷めにくい)

以上が、濃茶と薄茶のちがいとなっています。

この記事を書いている「京都はしもと製陶所」では、すべての工程が手づくりの抹茶碗を製作しています。

京都の清水焼熟練の職人によるものです。

また、窯元から直売ににお客様にお届けしています。そのため、高品質であってもリーズナブルな価格となっています。

よろしければ、京都はしもと製陶所の抹茶碗の商品ページも一度ごらんください。

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この記事を書いた人

橋本城岳(じょうがく)

創業80年 京焼清水焼の窯元
三代目「橋本城岳」(じょうがく)
茶道具をメインに暮らしのうつわを作る。

令和4年 経済産業大臣指定工芸品
京焼清水焼「伝統工芸士」に認定

妻の内藤加奈子(作家名)も陶芸家。
京都の伏見稲荷の陶芸と和雑貨のお店「ギャラリーKACCO」(カッコ)を営む。