茶道の平茶碗は何月に使う?時期や季節を茶道具専門の陶芸家が解説

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平茶碗(ひらちゃわん)は夏茶碗(なつちゃわん)とも呼ばれます。茶道で夏にもちいられる抹茶碗です。

しかし、平茶碗をつかう時期には決まりがあるのかな? そう思いますよね。

じつは、「平茶碗を使わなければいけない」という決まりはありません。

しかし、季節や時期によって、平茶碗をつかったほうが良い場合がございます。

そこで、このページでは、平茶碗を使う時期について解説いたします。

京都の茶道具の専門の陶芸家として、わかりやすく説明しております。

あなたに最適な平茶碗・夏茶碗を選ぶさいにお役立てください。

それによって、大切なお客さまによろこんで頂ける本当の「おもてなし」についても分かるようになるでしょう。

1.平茶碗を使ってよい時期は、5月~10月

平茶碗が使われる時期は、5月~10月の範囲で使われます。

そして、平茶碗をメインに使うのは、7月~8月となります。

理由は、二十四節気では、5月5日ごろの立夏(りっか)から11月8日ごろの立冬(りっとう)となるからです。

つまり、初夏から秋の手前まで続く、夏の季節となります。

その季節にあわせて、茶道では5月の初夏から寒くなる11月初旬までは、「風炉」(ふろ)が使われるのです。

風炉とは、夏場に使われる「炉」(ろ)のことです。茶の湯をわかすための炭火を入れる道具となります。

次の写真は、「風炉」の一例です。

風炉の画像
風炉は、5月~10月の夏場に用いる炉

風炉については、のちほど解説いたします。

この「風炉」の季節に合わせて、平茶碗をもちいることが基本となります。

平茶碗や通常ののカタチの抹茶碗を使いわける時期の目安を、以下に示しておきます。

平茶碗(夏茶碗)を使う時期の目安

・5月と6月は、平茶碗をつかってよい

・7月~8月は、平茶碗をメインに用いる

・9月~10月も、平茶碗を使ってよい時期

5月から6月は、季節が初夏にむかい暑くなっていきます。

そのため、昼間の暑い時間帯の茶会や茶事では、平茶碗をお使いになっても良いです。

5月と6月の朝や夜の茶会であれば、通常のカタチの抹茶碗を用います。暑さがそれほどでもないからです。

7月から8月にかけては、一日を通して平茶碗を使います。

この時期は、朝・昼・晩であっても暑さがキビしいからです。

また、9月や10月ともなりますと朝・夕が涼しくなってまいります。そのため、朝と夜は、通常の抹茶碗を使います。

そして、昼の暑い時間帯だけ平茶碗を用いるのです。

千家流であれば、上記のような使い分けをされることがほとんどとなります。

ただし、大切なのは「お客さまへの心くばり」です。

5月や6月の朝・晩であっても、 暑さがキビしいなら平茶碗を用いましょう。

見ためも涼しい平茶碗でお茶をお出しします。そして、「お客さまに快適に過ごしてほしい」という、あなたの気持ちをカタチで伝えましょう。

また、「合茶碗」(あいぢゃわん)というカタチのものもございます。合茶碗とは、平茶碗と普通の抹茶碗の中間のカタチのものです。

5月~6月の初夏の季節や9月~10月の初秋には、「合茶碗」(あいちゃわん)が使われることもあります。

この合茶碗については、以下の解説をご参照ください。

では、以下になぜこの期間に平茶碗をもちいるほうが良いのか? その理由を解説していきましょう。

2.平茶碗を使う理由:涼しい演出・風炉に合わせる・着物に合わせる

夏茶碗を用いる理由をご説明していきましょう。夏茶碗を使う理由には、以下の3つあります。

夏茶碗を使う3つの理由

1.お茶が冷めやすく、涼しい演出ができる

2.風炉の季節にあわせる

3.夏のお着物にあわせるて演出

では以上のことを解説していきましょう。

2-1.お茶が冷めやすく、見ためも涼しい平茶碗

1つめの理由は、平茶碗は、お茶が冷めやすいカタチであることです。理由は、平茶碗は口が広く開いたカタチです。そのため、お茶が冷めやすくなります。

それによって、暑い夏に、お客さまに冷めたお茶を楽しんでいただくことができるのです。

また、平茶碗をもちいることで「涼しさ」を演出することもできます。

平茶碗は、広口のためお茶の水面が広く見えます。これで、池や湖や海といった水に見立てることができるのです。

それにによって、涼しそうな演出をすることもできます。

以下の写真は、暑い夏を涼しくみせる演出の一例です。

夏の風物ホタルの平茶碗と清流のイメージの和菓子で夏を涼しく演出

写真のように平茶碗には、川の流れを描いた文様に芦(あし)という草。そして夏の風物ホタルを描いてあります。

そして、茶を飲み干すとホタルの絵が姿を見せます。

和菓子は、清流に泳ぐアユと笹をイメージした作り。とても涼しげな印象をお客さまに感じてもらえます。

また、広い口であるため、点てたお茶の泡がポツポツときれいに照明によって光る様子がよく見えます。

平茶碗は茶が冷めやすく、見ためも涼しい

このように、広口の浅いカタチの平茶碗は、茶が冷めやすく、そして、見ためにも涼しげな印象を与えることができる茶碗です。

ただし、夏に平茶碗を使わなければならないという決まりはありません。

しかし、夏の茶会や、夏の一服には、この平茶碗をもちいて、さらに素晴らしい演出をすることができるのです。

夏の季節感や涼しさを、さらに演出できる平茶碗の絵柄選び方は、このあとで解説いたします。

2-2.風炉の季節に合わせて平茶碗をもちいる

次に2つめの理由です。5月~10月までは、湯をわかすための炉が、夏用の風炉(ふろ)の季節だからです。

次の写真は、風炉の一例です。

風炉の画像
夏に使う風炉は、お客さまから離れたところに移動して暑さをやわらげる

風炉について、くわしい解説は以下のページを参考にしてください。

このように、夏に用いる風炉にあわせて、茶碗も平茶碗をもちいます。

お客さまに、少しでも涼しく過ごしていただきたい。そのような気持ちを、風炉の季節に平茶碗をあわせて用いることでに表現することができます。

夏の風炉の季節には、平茶碗をもちいて、お客さまに茶会を涼しく過ごしてもらいましょう。

2-3.夏ものの着物と平茶碗で涼しさを演出

さいごに3つめの理由は、着ている着物にあわせることです。

お着ものを夏ものであれば、それにあわせて茶碗も夏ものである平茶碗ももちいるのです。

夏ものの涼しげな着ものに、涼しいイメージの平茶碗や、夏の季節感のある茶碗をあわせて使いましょう。

着物と茶碗を夏ものにあわせることで、さらに茶会が夏の季節感のあるものに演出できます。お茶会の全体をお客さまに涼しさを感じてもらえるような印象にガラリと変えることができるのです。

お着ものについてもう少しくわしく申し上げます。

7月から8月は、お着物は夏もの薄物(うすもの)となります。また6月や9月も単衣(ひとえ)の薄手のお着物をおめしになると思います。

次の写真は、夏の単衣のお着物の一例です。

夏用の単衣の薄ものの着物の画像
見ためも涼しい夏ものの着物にあわせて、茶碗も夏用にする

このような夏ものの着物に合わせて、平茶碗も厚みの薄くて、涼しげな印象のものを使うのです。

お着ものも夏もの、そして茶碗、さらには、炉にいたるまで、すべて夏のよそおいにします。そうすることで、茶会を涼しく演出していくのです。

涼しさを演出した夏の茶会の画像
夏は、いかにも涼しきように。涼しくなる工夫をいくつも重ねる

5月から10月は、風炉をもちい、お着物も単衣の薄もの、そして薄手の平茶碗をつかって涼しさを演出してみましょう。

まとめ

平茶碗をもちいる時期をまとめますと、以下のようになります。

  • 5月から6月は、平茶碗もしくは、合茶碗を使う
  • 7月から8月は、平茶碗を用いる
  • 9月から10月は、平茶碗もしくは、合茶碗を用いる
  • 11月から4月は通常のカタチの抹茶碗を使う

また、夏に平茶碗を使う理由は以下のとおりです。

  • お茶が冷めやすい
  • 夏に涼しい演出ができる
  • 風炉の季節にあわせる
  • 夏のお着物にあわせるて演出

以上のように、平茶碗を効果的にお使いになることができます。

今の時代は、冷房や暖房がととのっています。ですので、今ご説明したようなご配慮は不要であるかもしれません。

しかし、茶道の祖先である「千利休」の言葉につぎのようなものがあります。

「夏は、いかにも涼しきように」。冬は、いかにも暖かなるように」

このお客さまへの心くばりが本当の「おもてなし」と言えるのではないでしょうか?

平茶碗茶碗の選び方についてのくわしい解説は、以下の関連記事を参照してください。

この記事では、平茶碗を購入するさいに気をつけるポイントを解説をプロの陶芸家の目線で解説しています。

使いやすく、そして夏をもっと涼しく楽しむための平茶碗選び方や使い方のご参考にしてください。

この記事を書いている「京都はしもと製陶所」では、「橋本城岳」(はしもと・じょうがく)のブランドで職人手づくりの清水焼の茶道具や食器を作っております。

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この記事を書いた人

橋本城岳(じょうがく)

創業80年 京焼清水焼の窯元
三代目「橋本城岳」(じょうがく)
茶道具をメインに暮らしのうつわを作る。

令和4年 経済産業大臣指定工芸品
京焼清水焼「伝統工芸士」に認定

妻の内藤加奈子(作家名)も陶芸家。
京都の伏見稲荷の陶芸と和雑貨のお店「ギャラリーKACCO」(カッコ)を営む。