薄茶の夏茶碗や平茶碗の使い方や意味とは?茶道具専門の陶芸家が解説

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平茶碗(ひらちゃわん)は夏茶碗(なつちゃわん)とも呼ばれます。茶道で夏にもちいられる抹茶碗です。

しかし、平茶碗をつかう時期や使い方、また、選び方はどういう基準があるのか? わかりにくいですよね。

じつは、「平茶碗を使わなければいけない」という決まりはありません。

しかし、夏茶碗の選び方によっては、お茶の点てやすさも変わります。さらには、平茶碗をもちいることで暑い夏の茶会を涼しく演出する方法があるのです。

そこで、このページでは、平茶碗を使う時期や、点てやすい夏茶碗のカタチを解説します。さらには暑い夏を涼しく演出するための夏茶碗の絵柄の選び方についてもご紹介いたします。

京都の陶芸家として、また茶道を習う者としての目線でわかりやすく説明しております。

あなたに最適な平茶碗の選びにお役立てください。

それによって、大切なお客さまによろこんで頂ける本当の「おもてなし」についても分かるようになるでしょう。

1.そもそも平茶碗とは? 夏に使う決まりはない

「平茶碗」(ひらちゃわん)は、茶道で夏にもちいる抹茶碗のことです。

茶碗の形状が、お皿のように平べったいため「平茶碗」(ひらちゃわん)ともいわれるものとなります。また、夏に使われるため、夏茶碗とも呼ばれます。

次の写真は、平茶碗の一例です。

夏茶碗は、冷めやすい広くて浅いカタチの抹茶碗

夏用の平茶碗が、このようなカタチをしている理由は、広い口でお茶が冷めやすいカタチだからです。暑い夏は、冷めやすいカタチのほうがお茶がおいしくなります。

ただし、茶道では「平茶碗を使わなければならない」という決まりはありません。

真夏であっても、通常のカタチの抹茶碗をもちいても問題ないのです。

しかし、平茶碗を使うことで、暑い夏にお茶が冷めやすくなります。さらに、平茶碗を使うことで涼しさを演出することもできるのです。

これがお客さまへの「心くばり」となります。

この点について、今の茶道の完成者である「千利休」(せんのりきゅう)は、次のように語っています。

「夏は、いかにも涼しきように。冬は、いかにも暖かなるように」

千利休は、この言葉をもって、茶の湯の極意だと言われました。

ホタルの平茶碗と清流イメージの和菓子の画像
「夏はいかにも涼しきように」そんな演出をしてみましょう。

暑い夏は、平茶碗をもちいて、茶会がいかにも涼しくなるような演出をしてみましょう。

次の章からは、平茶碗をもちいる時期や、茶を点てやすい平茶碗のカタチ、そして季節感と涼しさを演出する方法などについて解説していきます。

1-2.夏茶碗や平茶碗を使う時期

夏茶碗や平茶碗を使う時期は、5月から10月の間となります。その理由は、以下のようになるからです。

夏茶碗の用いる理由

1.お茶が冷めやすく、涼しい演出ができる

2.風炉の季節にあわせる

3.夏のお着物にあわせるて演出

夏茶碗や平茶碗を使う時期について、くわしくは以下の記事をご参照ください。

2.平茶碗の形:平形より馬盥型が茶を点てやすい

ここでは、夏茶碗や平茶碗のカタチについてご説明します。

平茶碗のカタチには、馬盥型(ばたらいかた)や平型(ひらがた)など様々なカタチがあります。

その中でも、お茶の点て(たて)やすい形の平茶碗は、馬盥型(ばだらいがた)とよばれるカタチです。理由は、茶碗の飲み口のフチが立ち上がっているからです。

フチが上に立ち上がっているため、茶を点てるときに外にコボれにくくなります。

次の写真は、馬盥型(ばだらいがた)の一例です。

馬盥型の抹茶碗の画像
馬盥型は、フチが立ち上がったカタチで茶がこぼれにくい

馬を洗うための大きな「盥」(たらい)にカタチがにているため、こう呼ばれます。

反対に、「平型」では、お茶を点てるときコボれやすくなります。カタチがお皿のように浅いからです。

次の写真は、平型の茶碗で茶をたてているところです。

平茶碗で茶をたてている画像
浅いカタチの平型の夏茶碗は、茶をこぼしやすい

もちろん、気をつけて茶をたてれば、写真のようにハデに茶をこぼすことはありません。

しかし、茶をこぼさないようにと神経をつかうことで、とても気を使います。

また茶会では、その緊張感がお客さまに伝わります。

そのため、リラックスした茶会のフンイキが台なしになってしまうでしょう。

また、おいしいお茶をたてにくくもなります。

ですので、平型の茶碗を選ぶは、深さのある平茶碗を選ぶようにしましょう。

そして、お茶を立てやすい茶碗は、馬盥型(ばたらいかた)の茶碗だと覚えておきましょう。

4.絵柄は、夏の風物で季節感と秋の絵で涼しさを演出

ここでは、平茶碗の絵柄の選び方を解説します。夏にもちいる茶碗の絵柄は、つぎの2つの選び方があります。

夏茶碗の絵柄の選び方

1.夏の季節の絵柄を選ぶ

2.少し先の秋の絵柄を選ぶ

このような選び方をすることで、夏をの季節感を楽しんだり、涼しさを演出することができます。次にくわしく解説していきましょう。

4-1.夏の絵柄を選んで季節感を楽しむ

1つめの夏の季節の絵柄を選ぶについてです。

茶道では季節感を大切にします。また、茶道にかぎらず、日本には四季があります。そのため日本人は季節の風物を楽しむ感性がとくに強いものです。

たとえば、夏の季節感を演出できる絵を以下にご紹介しておきます。

夏茶碗におすすめの絵柄

・青海波(せいがいは・海や川の波を文様化したもの)

・青楓(あおかえで・5月~10月まで用いられる)

・団扇(うちわ)

・朝顔(あさがお)

・風鈴(ふうりん)

・トンポやカゲロウ

・紫陽花(あじさい)

・京都の祇園祭(ぎおんまつり)

以下に、これらの絵の解説をしていきましょう。まず、次の写真は、青海波(せいがいは)とよばれる文様です。

青海波の文様の画像
青海波は、水をイメージした千家流の定番の文様

この絵柄は海や川の波を文様にしたものです。水をイメージしているため、夏に涼しい印象をあたえます。

また、この文様は、表千家(おもてせんけ)の好みものの絵柄となります。ですので、青海波は、正式な茶会から気軽な会まで安心してお使いになれます。

理由は、表千家流は、千家流はもちろんのこと、現在の茶道のあらゆる流派のスタンダートな流派となっているからです。

この点の流派のちがいについてくわしい解説は以下の記事を参照してください。

つづいて、次の写真は、青楓(あおかえで)の絵柄の夏茶碗となります。

青楓の夏茶碗の画像
青楓は5月から10月まで長い期間、使える絵柄

青楓は、5月から10月の紅葉の季節の前までもちいることができる絵です。そのため、青楓の絵柄は、初夏から秋までの長い期間お使いになることができます。

また、青々とした色が、お茶会を涼しげに演出できるでしょう。

さらに、3つめの画像は、団扇(うちわ)が描かれた茶碗です。

団扇の夏茶碗の画像
団扇は、真夏に涼しさを演出できる

団扇の絵柄も、夏によく使われる夏茶碗の絵柄となります。夏の季節感を楽しむことができるでしょう。

続いての写真は、朝顔の絵です。

朝顔の夏茶碗の画像
朝顔の絵で、夏の季節感を楽しむ

朝顔については、今の茶道の完成者である「千利休」(せんのりきゅう)の次のような逸話があります。

あるとき、天下人の豊臣秀吉が「朝顔が美しいので、茶会にきませんか?」と千利休から使いをもらいます。

しかし、秀吉が茶会に出かけると、庭の朝顔はすべて切り落とされていたのです。

ガッカリした秀吉は茶室に入ります。すると、その茶室には、朝顔が一輪だけかざられていました。

うす暗い、茶室に1本の光が差し込み、そのさきに一輪の朝顔が生けてあったのです。

千利休は、「一輪であるがゆえの朝顔の美しさ。庭のものは、すべてつんでおきました。」と言いました。

そして、秀吉は、千利休の「心くばり」に、とても驚いたという話です。

千利休による、すばらしい演出と言えますね。わたしたちも、お客さまに、このような「心くばり」ができるようになりたいものです。

さらに続けて、次の画像は、「あじさい」が描かれたものです。

あじさいの抹茶碗の画像
あじさいの絵柄で、ムシ暑い初夏を”涼しく”感じてもらう

あじさいは、5月から7月にかけて用いられる花となります。ムシ暑くなる梅雨に、涼しさを演出するのにピッタリな絵柄ですね。

最後にご紹介する絵柄は、「祇園祭」(ぎおんまつり)のものです。

祇園祭
祇園祭の絵で夏の季節を楽しむ

京都の夏の風物詩である「祇園祭」の絵柄は、夏の季節感をおおいに盛り上げてくれるでしょう。祇園祭りに一度でも行かれた方であれば、茶会での会話もはずみがつくでしょう。

このように、夏茶碗の絵柄は、夏の季節感を演出できるものを用います。

そうすれば、お客さまに季節の楽しんでもらえるでしょう。初心者の方にオススメの絵柄は、千家流の定番の「青海波」や、長い期間使える「青楓」となります。

4-2.秋の絵柄を選んで、涼しさを演出

次に、茶道では、抹茶碗を使う季節の少し先の季節の絵柄を選ぶとこがあります。夏に、あえて秋の絵柄をもちいることで、お客さまに「秋の涼しさ」を感じてもらえるからです。

たとえば、8月の真夏に、少し先の季節である9月の「秋の草花」の絵の茶碗を選びます。

以下に、夏茶碗に使われる「秋の絵柄」をいくつかご紹介しておきます。夏茶碗をお選びになる際に参考にしてください。

夏茶碗に描かれる「秋」の絵柄の例

・秋草(あきくさ)

・撫子(なでしこ)

・菊(きく)

・トンボ

次の写真は、「秋草」の絵柄の一例です。

秋草の絵柄の夏茶碗の画像
秋の草花の絵柄をもちいて、夏の暑さをやわらげる

秋をいろどる草花があしらわれています。青い桔梗(ききょう)の花や、萩(はぎ)などの「青い草花の色あい」が涼しげですね。

次の画像は、撫子(なでしこ)が描かれています。

撫子の絵柄の夏茶碗の画像
秋の七草「なでしこ」の絵柄で夏を涼しく演出する

撫子は、「秋の七草」の1つに数えられる草花となります。また、「大和撫子」(やまとなでとこ)という言葉のとおり、日本女性の美しさの象徴でもある絵柄です。

続いて、次の写真は「菊」(きく)の絵柄のものです。

合茶碗の画像
菊の絵は、9月の重陽の節句で縁起がよい

菊は、9月9日は重陽の節句(ちょうようのせっく)に飾られる花です。縁起がよく、おめでたい絵柄となります。また、この日には、菊の花を愛でたり、菊酒を飲んだりもします。

さいごにの写真は、「トンボ」が描かれています。

とんぼの絵柄の夏茶碗
秋の風物とんぼも夏を涼しく感じさせる絵柄

トンボは、夏に涼しい山で過ごします。そして、秋になると平地へ降りてきます。また、俳句の題材にもよく使われます。そのため、その俳句を調べておくと会話の材料に使いやすくなります。

以上のように、夏の季節に、あえて少し先の季節である秋の絵柄を選びます。

それによって、秋の涼しさをお客さまに感じていただける演出ができるでしょう。。

4-3.夏に冬山をイメージした茶碗を選ぶ

同じような考え方で、暑い真夏に、あえて冬山の景色の抹茶碗を選ぶこともあります。

寒さのきびしい雪山をイメージした茶碗をもちいます。お客さまに、暑い夏に冬の寒さを感じてもらうのです。

それによって、お客さまの暑さを少しでもやわらげる演出となります。

次の写真は、冬の富士山をイメージして作られた茶碗です。

冬山イメージの抹茶碗の画像


サンリツ服部美術館 国宝 白楽茶碗 銘 不二山 本阿弥光悦作 より引用

5.茶碗の銘が季節にちなんだものは注意

ちがう季節の茶碗を夏用の平茶碗としてお使いになる場合の注意を1点だけ申し上げておきます。それは、銘(めい)や由緒(ゆいしょ)には注意をすることです。

茶碗の銘が季節にちなんだものであれば、他の季節には使いにくいことがあるからです。

たとえば、先にご紹介した「冬山の景色」の茶碗です。

この茶碗の銘は「不二山」つまり、富士山ということです。この銘であれば、とくに季節にちなんだ名前ではありません。そのため、夏にお使いになるのに問題ありません。

同じように、銘が「氷室」(ひむろ)などであれば問題ないと思います。氷室であれば、涼しさを演出できるからです。

しかし、「冬籠」(ふゆこもり)や「寒月」(かんげつ)などの場合です。これは、明らかに冬の季節をイメージさせる名です。「冬」という季節名が入っていたり、「寒月」では晩秋のイメージが強いですね。

そのため、正式な茶会では、以上のような「茶碗の銘」であれば、私なら選びません。

ただし、気軽な茶会であれば、これらの銘のものを用いてもかまいません。お客さまにとって涼しい演出をできるのであれば、積極的に使いましょう。

正式な茶会では、冬のイメージの銘は、正式な茶会では使わないように注意しましょう。

まとめ

では平茶碗を選ぶときに注意するポイントを、おさらいしてみましょう。

平茶碗を選ぶポイント

・平茶碗も用いる時期は、5月から10月の風炉の季節

・お茶を点てやすいカタチは、馬盥型(ばだらいかた)

・平型は、茶道になれてから使う

・秋の絵柄で、暑い夏を涼しく演出

・夏に冬のイメージの茶碗で涼しさを演出することをある

・茶碗の「銘」は、季節の銘に注意する

このようなさまざまな方法で茶会を演出することで、お客さまも、あなたの心くばりに、きっと気づくと思います。そうすれば、あなたの印象もグッと良くなることでしょう。

「夏は、いかにも涼しきように」です。

また、通常の抹茶碗(冬茶碗)の選び方について、くわしいことを知りたい方は、以下の関連記事を見てください。

この記事では、買い物で、失敗しないための抹茶碗の選び方をプロの陶芸家の目で解説しています。京都清水焼のプロの職人が、くわしく解説しています。

この記事を書いている京都はしもと製陶所では、すべての工程が手づくりの夏茶碗を製作しています。京都の熟練の職人によるものです。清水焼の伝統技術をもちいてた一つ一つ手作りの夏茶碗です。

また、工房から直接、お客様にお届けしています。そのため、お店での購入にくらべ約半額となっています。よろしければ、京都はしもと製陶所の商品ページも、ぜひご覧になってください。

抹茶碗と和菓子桜の画像

窯元直売だから高品質で低価格な茶道具

清水焼 京都はしもと製陶所

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この記事を書いた人

橋本てつじ

京都府陶磁器協同組合青年部副会長。京都で創業70余年の清水焼の窯元の三代目の職人。私のフェイスブックやインスタグラムもぜひ見てくださいね!