茶道の初心者が練習用に選んではいけない抹茶碗を京都の陶芸家が解説 

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練習用の抹茶碗を選ぶときに、どういう基準で選んだらいいか? わかりにくいですよね。抹茶碗には、いろいろな形や種類があるからです。

じつは、茶道の初心者と上級者では、選ぶべき茶碗がちがいます。それによってお茶の点てやすさや美味しさもかわるからです。

また、選び方によっては練習が楽しくなるか、つまらなくなってしまうかも決まってしまいます。

そこで、この記事では茶道の初心者が「練習用に選んではいけない抹茶碗」を解説します。

私は、京都の陶芸家20年近くにわたり抹茶碗を作り続けてきました。職人から見た「選んではいけない抹茶碗」を解説します。

あなたにとって、また、お客さまににも適切な抹茶碗えらびにお役立てください。

1.初心者は、お茶を点てやすい抹茶碗を選ぼう

初心者の方は、おいしいお茶を点て(たて)やすい抹茶碗を選ぶことが、もっとも大切です。なぜなら、そもそもお茶会は、お客さまに、お茶をおいしく飲んでいただくためにあるからです。

茶会は、茶碗の品評会ではありません。

茶会はでお茶を楽しむ女性の画像
茶会は、お茶を楽しむためにある。茶碗の鑑賞会ではない。

点てやすい抹茶碗ならば、おいしいお茶ができあがります。そして、そのお茶会が、あなたにとっても、お客さまにも、きっと良い茶会になるでしょう。

抹茶碗は、お茶を点てやすいものを選びましょう。

反対に、初心者の方にとって使いやすい抹茶碗の選び方については以下のページをごらんください。

2.茶道の初心者が練習用に選んではいけない抹茶碗

それでは、選んではいけない抹茶碗の例を解説いたします。とくに初心者のうちは、次のような茶碗を選んではいけません。

選んではいけない茶碗

1.値段の高すぎる抹茶碗

2.奇バツなカタチのもの

3.名品でも、ひどく汚れた茶碗

以上のことを、順番に説明していきます。

2-1.値段の高すぎる抹茶碗を選ばない

1つめは、値段の高すぎる抹茶碗は、やめておきましょう。

高価な茶碗を茶会で使うと、茶碗の取りあつかいだけに気をつかってしまうからです。

高価な茶碗とは、価格が何十万円もするものです。たとえば、有名な陶芸家の作品や、歴史のある名品などです。

以下の写真は、価格45万円の値段の高い茶碗の一例です。

45万円の茶碗で茶を出されると、緊張して茶を楽しめません 。


つくる陶磁郎 特集茶道具に挑む 双葉社刊 より引用

この作品は、有名な陶芸作家がつくった抹茶碗です。プロの陶芸家から見ても、とても良い茶碗だと思います。

しかし、価格の高い茶碗を用いると、その取りあつかいだけに注意が向いてしまいます。

すると、茶を点てる動作も、固くなります。そうなると、おいしいお茶も点てられません。また、その緊張感が、お客さまにも伝わります。それでは、ゆったりした茶会のムードもなくなるでしょう。

さらに、お客さまにとっても、

「こんな高価な茶碗を落としたらどうしよう・・・・・・」

と不安になります。

落として割れた茶碗の画像
高価な茶碗は、お客さまにとって不安しかない。

そのような茶会では、あなたの心をこめた「もてなし」に気がつく余裕さえ、お客さまに無くなってしまいます。

そういった理由から、値段の抹茶碗を選ぶことはやめておきましょう。

2-2.奇バツなカタチの抹茶碗を選んではいけない

2つめには、奇バツなカタチの抹茶碗も初心者には向きません。変形した茶碗は、お茶を点てにくからです。

また、お客さまにとっても飲みにくいカタチだと、お茶をおいしくいただけません。

つぎの写真は、織部(おりべ)と呼ばれる種類の抹茶碗です。

奇ばつなカタチの抹茶碗の例の画像
奇バツなカタチの抹茶碗は茶を点てにくく飲みにくい


五島美術館 黒織部沓形茶碗 銘 わらや より引用

この抹茶碗は、美術館にかざられている名品です。

しかし、この織部(おりべ)の種類の茶碗は、変わったカタチのものが多いため、初心者にはおススメしません。

たとえ、名作であっても、奇バツな形の抹茶碗は、お茶を点てにくいものです。カタチがゆがんでおり、お茶を点てるときに、茶碗を手で固定しにくいからです。

奇抜なカタチの茶碗は、茶をたてにくい。

タタミの上では、しっかりと茶碗を押さえにくくなります。私も、茶碗をたおしてしまいそうになったことが、何度もありました。

また、ゆがんだ飲み口は、お客さまにとっても、たいへん飲みにくいもののです。

ですので、変形したカタチの抹茶碗は選ばないようにしましょう。

2-3.名品でも、ひどく汚れた抹茶碗はダメ

3つめは、ひどく汚れた抹茶碗を使わないことです。

たとえ歴史のある抹茶碗とはいえ、茶碗は「食器」だからです。つぎの写真は、古くて汚れがしみこんだ茶碗の一例です。

茶碗は食器。名品でも、古くて汚れがひどい抹茶碗は使わない


京都国立博物館 特別展覧会 京焼 みやこの意匠と技の図鑑 より引用

この抹茶碗は、美術館にある歴史のある作品です。

ただし、そのようて作品であっても、あまりにも汚れた茶碗はダメです。お客さまに、「汚れている」という印象をあたえてしまいます。

ですので、たとえ名品であっても汚れた抹茶碗をもちいることはやめておきましょう。

まとめ

茶会には、抹茶碗を見て楽しむことも含まれます。

しかし、茶会のいちばんの目的は、「お茶をおいしく飲むためにある」ことを忘れてはいけません。

そのためには、抹茶碗はおいしいお茶を点てやすいものを選ぶことが大切です。そして、お客さまにとっても飲みやすい茶碗を選ぶことが「おもてなし」となります。

そういった茶道の考え方から、以下のような茶碗を選んではいけません。

選んではいけない茶碗

1.値段の高すぎる抹茶碗
2.奇バツなカタチのもの
3.名品でも、ひどく汚れた茶碗

このような茶碗は、茶道になれてからお使いになることをおススメします。

そして、茶道の決まりごとは、すべてお客さまへの「心くばり」で決まるのです。このことも忘れないようにしましょう。

また、「抹茶碗の選び方」についてのくわしい解説は、以下の関連記事を参照してください。

この記事では、買い物で、失敗しないための「抹茶碗の選び方」をプロの陶芸家の目で解説しています。

このページを読んでいただくと、使いやすく、そしてお客さまにも喜ばれる「抹茶碗の選び方」がわかるようになります。

また、「京都はしもと製陶所」では、橋本城岳(はしもと・じょうがく)のブランドで抹茶碗を製作しています。

京都の清水焼の熟練の職人による、すべての工程が手づくりのものです。

さらに、工房から直売のため、高品質であっても低価格でご購入していただけます。

よろしければ、京都はしもと製陶所の商品ページも一度ごらんください。

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この記事を書いた人

橋本城岳(じょうがく)

創業80年 京焼清水焼の窯元
三代目「橋本城岳」(じょうがく)
茶道具をメインに暮らしのうつわを作る。

令和4年 経済産業大臣指定工芸品
京焼清水焼「伝統工芸士」に認定

妻の内藤加奈子(作家名)も陶芸家。
京都の伏見稲荷の陶芸と和雑貨のお店「ギャラリーKACCO」(カッコ)を営む。