抹茶碗の色や格の取り合わせやバランスを茶道初心者に京都の陶芸家が解説

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抹茶碗やその他の道具の取り合わせを考えるとき、どういうふうにコーディネートすればよいのか? むずかしいですよね。

それぞれの道具の格や色あいのバランスをとらないと、せっかく購入したものが美しく引きたちません。

それでは、お客さまにお道具を見て楽しんでもらうこともできません。

そこで、このページでは、抹茶碗やお道具の「格」(かく)や「色あい」のバランスをとる簡単な方法をご紹介いたします。

私は、京都で20年、抹茶碗や茶道の道具を作りつづけてきました。作り手から見た、抹茶碗やお道具の取りあわせについて解説いたします。

この記事を読んでいただければ、茶道具を購入するさいの、コーディネートの基本がわかるようになります。

そして、あなたのお道具をもっと美しく見せる演出ができるでしょう。

1.抹茶碗や他の道具は、「格」と「色あい」のバランスを取ろう

抹茶碗と他のお道具とのバランスは、道具の「格」と「色あい」のバランスを取りましょう。

「格」とは、茶道の道具には格が高い低いがあるからです。また、その道具の値段の高さや安さのこととなります。

お道具の格については、以下の記事をご参照ください。

「格」やのバランスをとらないと、それぞれの道具が高級だったり、安ものだったりでコーディネートが悪くなります。それでは、お客さまから見ても、違和感を感じるものです。

またあわせて、「色」の取り合わせも考えましょう。。

色のバランスをとることで、それぞれの道具を、お客さまに美しく演出することができるからです。

そのため、抹茶碗やその他の道具を選ぶときは、以下の2点に注意しましょう。

茶道具選びのコーディネート

1.抹茶碗と他の道具との「格」や「値段」のバランスをとる
2.抹茶碗と他の道具との「色あい」の取り合わせを考える

以上のことを、順に説明していきます。

2.抹茶碗や他の道具は、値段や格のバランスをとる

お茶会で用いる抹茶碗やそのほかの道具は「格」や「値段」の取り合わせを考えましょう。このバランスが取れていないと、おかしなコーディネートとなってしまうからです。

2-1.道具の値段の取り合わせのバランスをとる

たとえば、抹茶碗だけは、値段の高級なものだったとします。

しかし、他の道具は、すべて安ものを用いたとします。これではバランスが悪いですね。

これを服のコーディネートで考えてみます。

たとえば、上半身は高級なブランドのスーツだとします。しかし、パンツは安売りのジーンズです。これでは、とてもバランスが悪い組み合わせになりますよね。

上半身は高級スーツで下半身はボロボロのジーンズの男性の画像
高級スーツと安物ジーンズ組み合わせでは、バランスが悪い

お茶道の道具も、洋服と同じコーディネートと考えてください。ですので、用いる道具の「値段」の取り合わせにご注意ください。

ただし、「安もの」が悪いわけではありません。安いものであっても、すべての道具がキチンと手入れされててバランスがとれていれば良いのです。

たとえ服装が、すべて「安もの」だったとしても。その服がキチンとして清潔であれば全く問題ありません。

お道具の取り合わせを考えるときには、道具の値段のバランスをとりましょう。

2-2.お道具の格を合わせる

その他に、お道具の「格」のバランスについてです。

茶道の道具には「格」があります。格が高い・低いの格です。抹茶碗の格について、くわしい解説は、以下のページをご参照ください。

ただし、「格」については、あまり考えなくてもかまいません。道具の「格」にとらわれると、すべての道具が同じようになってしまうからです。

それでは、お客さまに、さまざまな道具を見て楽しんでもらうことができません。

また、お茶会の演出も限られたものになってしまうでしょう。

以上のように、抹茶碗は、他の道具との「値段」と「格」のバランスをとるようにしましょう。

2-1.色のバランスは、「ひき算」と「たし算」で選ぶ

次に、抹茶碗やその他の道具の「色あい」の取り合わせの方法です。バランスをとることで、それぞれの道具が引き立てあうからです。

色の取り合わせは、「ひき算」と「たし算」で考えるとわかりやすくなります。

色のバランスのとり方

1.道具の全部がハデな色の場合は「ひき算」

2.道具がすべて渋い色は、「たし算」

以上のような、色のバランスのとり方を解説していきましょう。

1-2-1.道具がすべてハデな色の場合は、「ひき算」する

まずは、道具がぜんぶハデな色や絵柄の場合は、「ひき算」をしてみましょう。

道具のすべてがハデだと、そのハデな色や絵が目立たなくなるからです。これでは、せっかくの美しい絵柄の道具も引き立ちません。

これを服装で考えてみます。

たとえば、着ている服が、すべてハデな柄ものだとします。これだと「派手すぎ」となります。

以下の写真は、全身がハデなヒョウ柄の服装です。

全身ヒョウ柄の服装の画像
全てヒョウ柄だとヒョウ柄が引き立たない

この場合は、「ひき算」をしてみましょう。

ハデなヒョウ柄の服から、色を「ひき算」して黒にすると、ヒョウ柄がさらに美しく引き立つのです。

一部がヒョウ柄の服装の画像
ヒョウ柄を「ひき算」すると、ヒョウ柄が引き立つ

このように、一部ちがうトーンを入れると、おたがいに引き立てあうのです。

この考え方を、お茶の道具にも当てはめてみます。

次の写真は、道具のすべてが派手な絵柄の場合です。これだと、ハデな絵柄がおたがいを殺しあって目立ちません。

ハデな道具の組み合わせは、お互いを引き立てない。

そこで、「ひき算」をしてます。赤いハデな茶入れの色を「ひき算」して黒にします。すると、赤い抹茶碗のが、さらに美しく引き立つのです。

「ひき算」で黒い地味な茶入にすると、赤い茶碗が、
さらに美しく引き立つ

お道具が、ぜんぶハデな色あいの場合は、ハデな色をひとつ「ひき算」してみましょう。そうすることで、道具の取り合わせがよくなります。

1-2-2.道具の色が、すべてシブいときは「たし算」する

次に、道具のすべてが、黒一色などシブすぎる場合です。

すべての道具が黒一色でば、「シブすぎ」となります。また、それぞれの道具が黒一色にうもれて、せっかくのシブい黒が引き立ちません。

この場合は、「足し算」をしてみましょう。1つ色を「たし算」することで、黒のシブさが、さらに美しく引き立つからです。

たとえば、服装で考えてみます。着ている服が黒1色だとします。そこに違う色を一つ「たし算」します。するとシブい黒が、さらにシブい黒に見えるようになります。

次の写真は、黒一色の服装の一例です。服装の色が黒だけの場合、その黒が引き立ちません。

全部黒い服装の画像
全部が黒の服だと、黒が引き立たない

次の写真では、黒一色の中に白い模様の入った服を「足し算」してみました。

黒い服装に、ちがう色を足した画像
黒を「ひき算」すると、黒が引きたつ

すると、白くて模様のある服を「たし算」することで、黒の色が引き立ちます。また、白い模様の服装も黒のおかげで、より引き立ちます。

ぜんぶがシブい色の場合は、ちがう色のを「たし算」することで、おたがいが引き立てあうのです。

お茶の道具をこの考え方に当てはめてみましょう。

次の写真は、道具の色が、すべて黒っぽい取り合せです。これでは、「シブすぎ」となり、シブい黒が目立ちません。

すべての道具が渋い黒の場合の画像
ぜんぶ黒だと、せっかくのシブい黒が引き立たない

次の写真のように、道具の1つをハデな赤い色に「たし算」してみます。すると、主役であるシブい黒の茶碗を、さらに引き立たせることができます。

ちがう色を「たし算」して、赤い茶入にすると、
黒い茶碗のシブさが引きたつ

以上のように、道具はハデな場合や、逆にシブすぎる場合は、「ひき算」と「たし算」で色のバランスをとるようにしましょう。

このように色の取り合わせを考えることで、お客さまにとってステキな演出ができるでしょう。

まとめ

抹茶碗やお道具の「格」や「色あい」の取り合わせの方法をまとめます。

茶道具のバランスのとり方

1.抹茶碗やそれぞれの道具の「値段」と「格」のバランスをとる

2.抹茶碗やお道具の「色あい」のバランスをとること

1.抹茶碗の「値段」と「格」のバランスをとりましょう。

洋服のコーディネートと同じように考えてください。上半身は高級スーツなのに、ズボンは安ものGパンをはいているのでは、バランスが悪いからです。

ですので、ある程度は、道具の価格や格を合わせるようにしましょう。

2.抹茶碗やお道具の「色あい」のバランスは、「ひき算」と「たし算」で考えましょう。

道具が、すべてハデな場合は、「ひき算」をしましょう。ハデな道具をひとつ「ひき算」します。そして地味でシブいものにします。そうすることで、ハデな道具がより美しく引きたつのです。

反対に、お道具のぜんぶがシブい色の場合は、「たし算」をしましょう。地味な色に、ひとつ「たし算」します。ハデなものや色のトーンのちがう道具を足すのです。

そうすることで、シブい道具の色あいが、さらにシブく引き立つでしょう。

関連記事として、「抹茶碗の選び方」についてのくわしい解説を以下のページでご紹介しております。

この記事では、清水焼のプロの陶芸家が「抹茶碗の選び方」について、わかりやすく解説しております。ぜひご参照ください。

また、京都はしもと製陶所では、橋本城岳(はしもと・じょうがく)のブランドで抹茶碗を製作しています。京都の清水焼の熟練の職人による、すべての工程が手づくりのものです。

また、当工房から直接、お客様にお届けしています。そのため、高品質であってもリーズナブルな価格となっています。

よろしければ、京都はしもと製陶所の商品ページも一度ごらんください。

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この記事を書いた人

橋本城岳(じょうがく)

創業80年 京焼清水焼の窯元
三代目「橋本城岳」(じょうがく)
茶道具の作品を造る

「京都はしもと製陶所」では
暮らしの"うつわ"を製作

令和4年 経済産業大臣指定工芸品
京焼清水焼「伝統工芸士」に認定